【恋する西洋絵画】黒一色で描く内気な画家を劇的に変えたのは、愛だった。

らぶりりライターのナナシロです。

 

さて。

らぶりりーすの新企画です。

 

みなさん、美術館に絵を見に行くことってありますか?

文科系のデートコースとしては定番かもしれませんね。

たいていは、日本人でも名前を知っている著名な画家の企画展に赴き、よく分からないけど「美しいなぁ、綺麗だなぁ」と言いながら見てまわる、という感じでしょう。

ですが実は、その絵画の背景に着目すると、危なげな恋の香りが描かれていたり、芸術家らしい偏執的な愛の形が浮き彫りになったりしているのです。

 

美術館の展示カタログにも書いていないような恋愛にまつわる西洋絵画の話を、大学時代からずっと西洋絵画史の研究を続けている僕が、みなさんにご紹介します。

 

今回紹介するのは、19世紀末のフランスで活躍した孤高の画家、オディロン・ルドン。

オディロン・ルドンの自画像の画像

オディロン・ルドンの自画像(引用:Wikipedia)

そして彼の代表作品である、「閉じた眼」です。

オディロン・ルドン「閉じた眼」の画像

オディロン・ルドン「閉じた眼」(引用:Wikipedia)

 

それでは、恋する西洋絵画の世界へご案内しましょう。

 

暗がりを愛した少年は、独りで絵を描き続けた

1840年にワインで有名な都市ボルドーで生まれたオディロン・ルドン。

裕福な家庭に生まれたものの、生後2日で里子に出され11歳まで親元を離れて育ちました。

とても内気で病弱だったため、いつもお気に入りの暗がりで一人で絵を描いているような少年でした。

 

その後も、親元へ戻ってからも父親からの意向で建築家を目指すも受験に落ちて断念するなど、不遇な日々が続きます。

こういった思春期の不安定な環境が、その後画家として人生を歩むルドンの初期の作風を形作ったと言えるでしょう。

コミュニケーションが苦手なルドンが影響を受けたのは、同時代の先輩画家などではなく、ルドンより干支が一回り年上の繊細な植物学者でした。

 

内向的な青年は、顕微鏡下の世界を黒一色で描いた

植物学者アルマン・クラヴォーと出会ったのは、ルドンが20歳のときのことでした。

クラヴォーに教わった顕微鏡下の世界に魅せられたルドン青年は、この時期に初の版画集を出します。

この時期のルドンは、版画や木炭画など、すべての作品を黒一色で描いていました。

人となかなか打ち解けることのできないルドンは、単色で無機質な世界に没頭しました。

 

なおルドンは、作品「睡蓮」で有名なクロード・モネと同い年。

そう、時代的には「外の世界の光をキャンバスに描こう!」と息巻いて活動していたモネら印象派が、それまでの絵画の歴史を覆していこうとしていた頃でした。

ですが、ルドンはそういった同時代の画家たちとはほとんど絡むことなく、深く深く自分の殻へ閉じこもっていきます。

オディロン・ルドン「眼気球」の画像

オディロン・ルドン「眼気球」(引用:Wikipedia)

オディロン・ルドン「サボテン男」の画像

オディロン・ルドン「サボテン男」(引用:Wikipedia)

オディロン・ルドン「泣く蜘蛛」の画像

オディロン・ルドン「泣く蜘蛛」(引用:Wikipedia)

これらが、この時期のルドンの代表作たちです。

どの作品も、幻想的でどこか不気味なものばかりとなっています。

 

ですが、そんな孤独な世界で夢想的な絵を描き続けたルドンに、人生最大の転機が訪れます。

 

愛を知った画家は、空想の世界から脱した

1880年。

ルドン40歳のある日、彼はカミーユという女性と結婚します。

妻・カミーユは内向的なルドンのことを献身的に支えました。

残念ながら2人の間に最初に生まれた子供は生後半年で亡くなってしまいますが、それから3年後の1889年に、再び子供を授かります。

 

そして、その翌年の1890年。

ルドンは初めて、カラーで描かれた絵を完成させました。

それが冒頭でも紹介した、「閉じた眼」でした。

オディロン・ルドン「閉じた眼」の画像

オディロン・ルドン「閉じた眼」(引用:Wikipedia)

 

先に紹介した作品「眼気球」もまさにそうでしたが、ルドンは目や視線、まなざしをモチーフにした作品を若い頃からたくさん描いています。

孤独の中で成長したルドンは、眼というモチーフに彼自身の不安な心や独特な想像力を反映していたのです。

ですが、この作品「閉じた眼」には、そういった不穏な雰囲気がありません。

むしろ、目は安らかに閉じられ、凪いだ海と組み合わさった大きな女性のイメージからは、穏やかな印象を感じます。

 

そう。

孤独な画家は、妻と、我が子と出会い、愛を知ったのです。

そのかつてない幸福感が自然な形で表現されたのが、「閉じた目」なのです。

 

ルドンはこの後、この作品を皮切りに、これまででは考えられないようなカラフルな作品をどんどん発表していきます。

 

最後に、愛を知ってからルドンが描いた油彩やパステルの絵画をいくつかご紹介しましょう。

オディロン・ルドン「花雲」の画像

オディロン・ルドン「花雲」(引用:Wikipedia)

オディロン・ルドン「トルコ石色の花瓶の花」の画像

オディロン・ルドン「トルコ石色の花瓶の花」(引用:Wikipedia)

オディロン・ルドン「ビーナスの誕生」の画像

オディロン・ルドン「ビーナスの誕生」(引用:Wikipedia)

驚くほどに色彩豊かですよね。

愛を知ったルドンの衝撃の大きさを物語っています。

 

ルドンの場合は、結婚した妻、そして生まれた子供との出会いが大きな転機となりました。

恋や愛といった情緒的な営みは、いつの時代も変わることなく人の心を揺さぶります。

 

もし今あなたがどんな暗がりの中にいたとしても、必ず光は差します。

そしてその先には、鮮やかな色彩に満ちた世界があります。

 

愛を知ったことで黒一色で描いていた画家の色彩が花開いたように、きっとあなたも、震えるような恋や掛け値ない愛に出会うことでしょう。

▼らぶりりーすのおすすめ特集はこちら!▼
恋活アプリランキング

▼この記事を今すぐSNSでシェアする

ABOUTこの記事をかいた人

ナナシロ

アート、ホラー、面白系コンテンツの企画屋。Webクリエイター。怪談師。アートサロン『Artfans.jp』主催。添い寝屋。 自分にしっくりくる生き方を探していたら『らぶりりーす』にたどり着きました。 ツイッターで恋愛相談に乗っています。