ライターのナナシロです。
今日はいつもより重めの内容を扱いますが、「自分は関係ないかも」と思わずに、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
「デートDV」って知っている?
みなさんは、「デートDV」という言葉を聞いたことがありますか?
Twitterでアンケートをとってみました。

だいたい半数より少し多いくらいの方は、「デートDV」が何かをよく知らない、といったところでしょうか。
実は、この「デートDV」は、内閣府が定期的な調査をおこなったり、相談窓口を設けたりしているほど、日本の男女関係における深刻な問題となっているのです。
ですが、まだまだ一般には認知されておりません。
きっと、今この記事を読んでくださっている方の中にも「聞いたことがない」という方がいらっしゃると思うので、「デートDV」が何かを端的にご説明しますと、
夫婦間、カップル間で発生する暴力行為
を、「デートDV」と言います。
内閣府の男女共同参画局が2015年に発表した「男女間における暴力に関する調査報告書」によると、女性の約5人に1人が恋人から暴力を受けた経験があると報告されています。

参照:内閣府男女共同参画局「男女間における暴力に関する調査報告書<概要版>」(平成27年3月)
さらに、自治体によっては独自調査をしているところもあり、10代~20代の女性は3人に1人が恋人から暴力を受けた経験がある、という調査結果もあるくらいです。
「え?暴力なんて、そうそうないでしょ?」
「私は手をあげられた経験ないし、関係ないよ」
そう思われた方もいると思いますが、「デートDV」で定義されている「暴力行為」は、決して身体的暴力だけではありません。
では、どんなものが「デートDV」になるのか。
さっそく見てみましょう。
何が「デートDV」になるの?
DVというと、身体的暴力が真っ先に思い浮かぶと思いますが、デートDVはそれだけでなく、精神的な暴力、行動の制限、性的暴力、経済的暴力も含まれます。
具体的には、以下のような行為が「デートDV」に該当します。
- 身体的暴力
- 殴る、叩く、つねる、蹴る、噛むなど
- 腕などを強く掴む
- 物を投げつける
- 刃物などで脅す
- 精神的暴力(心理的暴力)
- 傷つく発言を繰り返す
- 「やせろ」など身体のことを言う
- バカにしたような言い方をする
- 不機嫌になり無視する
- 大声でどなる、威圧する
- 暴力をふるうのと優しくするのを交互におこなう
- 嫌なことの責任を押し付ける
- 行動の制限(社会的隔離)
- 相手の携帯電話をチェックする
- 友人関係を制限し孤立させる
- 服装や見た目を細かく指定する
- 性的暴力
- 避妊に協力しない
- いやらしいビデオを無理やり見せる
- 無理やり性行為をおこなう
- 経済的暴力
- デート費用をいつも支払わせる
- お金を借りたまま返さない
いかがでしょうか。
「そんなことまで『デートDV』になるんだ」と驚いた方もいると思います。
ですが、これらすべて「相手の意志を無視する行為」である点で問題があります。
確かに、付き合い始めたばかりで、お互いどういうことをされたら嫌なのか分からず、ぶつかったりすれ違ったりしてしまった、ということはよくあると思います。
ですが、はっきりと「やめて」と言っているのに、同じ行為をまたおこなわれた場合、それはもう「相手の意志を無視する行為」=「デートDV」と言えるでしょう。
「やめて」と言っているのに、恋人から「いいじゃないか」「何が悪いんだよ」と言われ強引に押し切られた経験がある方は多いのではないでしょうか?
それが、「デートDV」なのです。
次に、「デートDV」の被害を受けた方に直接話を聞いたので、当時のエピソードとそのときどんな感情だったかをご紹介します。
「デートDV」被害者のエピソード紹介
Aさんの場合(精神的暴力、性的暴力)
誰からの被害だったか
- 当時付き合っていた恋人
どんな被害を受けたか
- 性行為を強要され、断ると「愛がないのか」「もう俺のことは好きじゃないのか」と言われた
- 生理のときも「手と口だけでいいからやって」と強引に求められた
- 彼氏から「付き合っているのだから俺の性欲に応えるのは当たり前だろ?」というスタンスで接せられた
- 彼氏のことを友達に相談したが、「愛されている証拠じゃん」「よくある話だよ」と言われてしまった
- 友達から理解を得られなかったことにより、余計に傷ついてしまった
DV被害を受けていた当時はどう感じていたか
- 理不尽なことでも相手の要求に応えていればいつか変わってくれるだろうと信じていた
- 「相手の愛を受け入れられない自分は薄情な人間なんだ」と思い込んでいた
その後どうなったか
- 付き合っていた当時は諦めてしまったが、後に「デートDV」という言葉を知り、「自分が受けていたのはDVだったのだ」ということが分かって、少し救われた
現在デートDVの被害を受けている方へアドバイス
- 屈して生きる必要はないし、理不尽さからは逃げていい
- 相手に求めるばかりの人は、こちらがどれだけ応えていても、つけあがるばかりでずっと変わらない
Bさんの場合(身体的暴力、精神的暴力、行動の制限、性的暴力)
誰からの被害だったか
- 当時付き合っていた恋人
どんな被害を受けたか
- 殴る等の暴力(人から見えない場所で、傷が見えない程度に加減して暴力を振るわれた)
- 予定をすべて彼優先にしないとキレられた
- 寝てしまってLINEをすぐに返せなかったとき、LINEをブロックされた
- すぐに「別れるぞ!」と脅された
- 「ブス」「お前は俺の性奴隷だ」と罵られた
- 性行為を強要された
DV被害を受けていた当時はどう感じていたか
- 「普段優しい彼がこんなになってしまうのは、自分が悪いんだ」とずっと思っていた
- 愛されているから束縛されているんだ、とも思っていた
その後どうなったか
- なんとか別れることができた
- 今振り返ると、あれは愛情ではなくて支配欲や執着心だと思う
現在デートDVの被害を受けている方へアドバイス
- 何よりも自分を大事にして、自分を一番に考えて
Cさんの場合(精神的暴力、性的暴力、経済的暴力)
誰からの被害だったか
- 留学先でできた外国人の恋人
どんな被害を受けたか
- 喧嘩した後「仲直りでセックスをしよう」と言われ、怖くて断れずに避妊無しでの性行為を強要されてしまった
- そのときの性行為が原因で妊娠してしまったが彼は中絶するための病院を探してくれなかった
- 彼に中絶費用の半額を負担してもらおうとしたら「そんなことを言うなら別れる」と言われた
- その後、ようやく中絶するための病院が見つかったが、彼は付き添ってくれず、面識のない彼の友人が送り迎えした
DV被害を受けていた当時はどう感じていたか
- 「中絶費用を払ってくれないなんてありえない!」と思ったが、「彼の国ではそれが普通なの?」「彼は冷たい人なの?」などと不安になった
- 知らない人にまで自分の妊娠を知られていたことが嫌だった
その後どうなったか
- なんとか中絶したが、留学を終えて帰国後、彼とは自然消滅
現在デートDVの被害を受けている方へアドバイス
- 彼氏が相手であっても合意のないセックスはレイプと同じ
- 自分のされたことはひどいことだ、という自覚をもっていい
すべての例で共通しているのは、「自分は間違っているかもしれない」と不安になっている点です。
相手を責めずに自分を責めてしまうことで、相手が余計につけあがってしまう。
これが「デートDV」の悪循環です。
また被害者は、自分を責めると同時に、どこかで相手が変わってくれることを期待してしまっています。
ですが、いずれの例でも、恋人が変わることはありません。
もしも「デートDV」だと思ったら…
ここまで、何が「デートDV」で、どういう形で被害に遭うのかを紹介させていただきました。
もしかすると、
「あれ、私のこれも『デートDV』では…?」
と思った方がいるかもしれません。
そのときは「デートDV110番」というサイトから相談の電話をかけてみてください。
「デートDV」の恐ろしいところは、繰り返し暴力を受けているうちに、それがおかしなことだと分からなくなるところです。
今回インタビューさせていただいた被害者の方々も、「当時は自分が間違っていると思っていた」と口々におっしゃっていました。
なので、「そんな大袈裟ではないよ」と思わずに、少しでもおかしいと思うのであれば、「デートDV110番」から相談してみてください。
これからの恋人たちの在り方
僕なりに分析してみたのですが、もう何年も前から内閣府で調査をおこなっている「デートDV」がいまいち浸透していないのは、
どこからが「デートDV」なのかが分からない
という問題があるからだと思います。
確かに先ほど、「これが『デートDV』です」と一覧を出しましたが、では、例えば以下の場合はどうでしょう?
- 「私は強引にセックスに持ち込まれるのが好きだし、むしろちょっと暴力的なくらいがいいんだけどなぁ」
- 「彼は子どもっぽくて、すぐ機嫌悪くなってLINEをブロックしてくるけど、しばらく放っておくとすぐ戻ってくるのよ」
- 「彼女がおねだりしてくると、かわいくてついデート代出しちゃうんだよなぁ。だってかわいいんだもん」
…これらは「デートDV」なのでしょうか?
答えはNOだと思います。
NOと言い切れる理由は単純で、上記の方々は、自分の意志で行動を決定していますし、「自分は自分、相手は相手」という距離の取り方ができているからです。
要するに「デートDV」は、その行為によって決まるのではなく、その行為を受けた人が自分の意志を失っていないかで決まるのです。
そこで、「デートDV」を見分ける手段として、行為そのもののチェックだけでなく、以下のチェック項目で自分の状態のチェックもおこなってください。
- 彼がしてきた行為を「いやだ」と断れるか?
- 彼を「怖い」と思ったことはないか?
- 彼の考え方や態度に振り回されていないか?
- 「彼がいないと生きていけない」あるいは「彼は私がいないと生きていけない」と思ったことはないか?
これらのどれか一つでも当てはまるのであれば、あなたは「デートDV」の被害を受けている可能性があります。
ここまで読み、自分のおかれている状況をよく確認した上で、
「やっぱりおかしいかも…」
「このままは嫌だ…」
と思うのであれば、そのときはどうか、自分の心や身体がボロボロになる前に「デートDV110番」から相談してください。